
2026.04.17
「表現は違っても、同じ“作品”」尾形凌×真田将太朗×KOMOREBIが語る、2人展「CUE」とアートと音楽の交差点

東京藝術大学の同期である尾形凌と真田将太朗による2人展「CUE」が開催されている。構想から約4年を経て実現した本展では、それぞれの新作に加え、両者による初の共作を含む20点以上を展示・販売する。

photo by Keizo Kioku
オープニングでは、尾形の高校時代の同級生であるヒップホップユニット「KOMOREBI」がシークレットゲストとしてライブパフォーマンスを披露。アートと音楽が同一空間で交差する象徴的な一夜となった。

本記事では、尾形とKOMOREBIの関係性、そして尾形×真田による本展の背景と制作プロセスについて話を聞いた。
「表現する立場としては同じ。高校の延長線にある関係」——尾形凌×KOMOREBI

——まず、尾形さんと同級生だったメンバーについて教えてください。
YUTA)YUTA、SAM、MAXIの3人が尾形と同じ高校で、3年間一緒に過ごしました。
——当時からそれぞれ表現活動はしていたのでしょうか。
尾形)僕は高校3年くらいから絵を描き始めていて、作家活動も少しずつやっていました。彼らはダンス部で、外でも活動していて。
でも、音楽が好きとか服が好きとか、そういうところから自然と仲良くなっていったと思います。
——KOMOREBIは当時から音楽ユニットではなかった?
YUTA)そうですね、ずっとダンスでした。
OTAとMATHEUSはスケボー仲間で、カルチャーで繋がってる感じでした。
——そこから音楽に移行したのは?
MATHEUS)結成は3年前で、5人で「KOMOREBI」を始めました。
——尾形さんはその変化も見てきた?
尾形)デビューライブも観に行きましたし、今でもユータくんと飲みに行ったりします。
自分はものづくりをしていて、彼らもものづくりをしているという意味では、高校の頃からのイメージが変わっていなくて。そのまま「KOMOREBI」になっている感じがして、自然体なところが好きですね。
——逆にKOMOREBIのみなさんから見た尾形さんは?
YUTA / SAM)全然変わってないです。一番変わってない(笑)。
みんなオガちゃんって呼んでるんですけど、体育祭とかめちゃくちゃ熱くて。サッカーもすごく上手くて、見た目は文化系なんですけど、結構体育会系なんですよ。
尾形)美術の授業のとき、みんなの作品制作もかなり自由で。絵の具をぶちまけて作ってたりとか。
——当時から表現に対する感覚は近かった?
SAM)そうですね。
あと、靴に絵を描いてもらったりもしてました。VANSの真っ白い靴に描いてってお願いして。
尾形)当時はそういうの結構やってましたね。
——最近の交流は?
YUTA)この前、東京タワーの近くでワイン持って飲みました。
尾形)芝公園で、紙コップで飲みながら東京タワーを見てました。デートみたいなんですけど(笑)。
——こうして同じ場で交差するのはどんな感覚ですか。
尾形)めちゃくちゃ嬉しいですね。
時間もそんなに経っていない感覚で、自然にまた一緒に何かできているのがいいなと思います。
——尾形さんの作品はどう見ていますか。

YUTA)個展とかも観に行っていて、最初のお寺の展示や藝大の卒制も見ました。
一見すると昔の日本の技法のように見えるんですけど、よく見るとすごく現代的で、好きなものが詰め込まれている。マイケル・ジャクソンとか、いろんな要素を見つけるのが楽しいです。
——表現ジャンルは異なりますが、共通点はありますか。
SAM)表現する立場としては同じだと思っています。絵は形として残るけど、僕たちはライブとして体験を残す。どちらも“作品”であることに変わりはない。
僕たちにとっては言葉が作品ですね。
MATHEUS)形は違えどアートはアートでということだと思います。
「違うからこそ成立する」——尾形凌×真田将太朗

——今回の2人展はどのような経緯で実現したのでしょうか。
尾形)2020年に入学してコロナ禍だったので、授業がほとんどなくて。
その中でもお互いの展示には行き来していて、同じペインターだけど全然違う表現をしているなと思っていました。この二人でやったら面白いんじゃないかというのはずっとあって、具体的に動いたのは去年くらいです。
真田)学部も校舎も違っていて、学校ではほとんど会わなかったんですけど、外のギャラリーで作品を見て仲良くなって。
飲み友達だった、というのが大きいですね。4~5年前からやりたいねという話はしていて、それが今回実現しました。
——今回の見どころである共作について教えてください。
尾形)それぞれの作品を並べるだけじゃなくて、一つのキャンバスを二人で埋めることは最初からやりたかったです。ただ、表現も手法も違うので、どうなるかは分からない。その不確定さも含めて面白いと思っていました。
真田)僕は風景モチーフの抽象画で、尾形は妖怪のような目に見えそうで見えない具体的なものを描く。同じペインターだけど描いているものが違うので、ぶつかる可能性もあるけど、逆に同じ画面の中で役割分担できるんじゃないかと思いました。

尾形凌×真田将太朗「Blue Moon」Photo by Keizo Kioku
——空間全体で意識したことはありますか。
尾形)真田が最初に見る自分の作品を、いい意味で裏切りたいという気持ちはありました。個展だったら出てこなかった表現が自然と出てきたと思います。真田とやることで、自分の殻が破れた感覚がありました。
真田)普段は画面を均一なストロークで埋めていくことが多いんですが、今回は余白をどう扱うかも含めて考えました。結果的に、余白を残したらそこに色が入っていたりして、そのズレが面白さになっていった。お互いの予想を裏切り合うことで、この空間に合った展示になったと思います。
「CUE=合図」——交差から生まれるもの
——WALL_alternativeは実験的で領域横断的な表現を重視する場でもありますが、これまで他ジャンルとのコラボレーションで刺激を受けた経験はありますか。
尾形)音楽に合わせてドローイングをしていく試みをしたことがあります。
そのときは、より身体が本能的に動く感覚があって、自分が陸上やサッカーをやっていた頃のように、頭で考える前に体が先に動くような感覚を呼び起こされました。考えすぎずに制作できたのが新鮮で、すごく楽しかったです。
真田)音楽は同じ時間を共有している相手に対して、どう共鳴を起こすかという点が重要な表現だと思っています。
絵画は空間に残るものですが、音楽は時間の中で体験されるもの。その違いはありつつも、どちらも身体を通じて共感や感動を生むという意味では共通している。
そうした中で、他ジャンルと横断して制作することや、異なる表現によって感動を増幅させていくことは、今の時代において非常に重要だと感じています。
特にWALL_alternativeのような実験的な場では、空間の作り方も含めてジャンルレスに考えることができるので、自分たちにとっても新しい挑戦ができる良い機会になりました。
——来場者にはどのような体験をしてほしいですか。
尾形)夜に作品を鑑賞できることで、洞穴のような独特の空気があると思います。
その空間の力も借りながら、より深く作品の世界に入ってもらえたら。
真田)今回、展覧会タイトルは合図を意味する「CUE」としました。二人で対話しながら制作した現場を楽しんでほしいと思いますし、
作品と来場者の皆さん、それぞれの風景や記憶とを重ねながら、新しいコミュニケーションが生まれたら嬉しいです。
尾形凌

2001年4月東京都生まれ。
2020年4月東京藝術大学美術学部先端芸術表現科入学、2024年3月学部卒業、2026年東京藝術大学大学院 先端芸術表現専攻修士課程2年修了。
現代における妖怪や不可視の存在たちを作品の主題とし、絵画や立体、アニメーションなどを通じて表現している。加えて妖怪と人間の狭間やあの世とこの世の狭間に存在する世界を描く事でそれらを可視化することを試みている。
Instagram:https://www.instagram.com/tunami2002/
真田将太朗

画家、2000年生まれ。東京藝術大学美術学部卒業、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。「新しい風景」をテーマに、重力や時間を縦方向の筆致で描く抽象絵画を制作。これまでにGINZA SIX、阪急阪神百貨店、台湾新光三越などで個展を開催。JR長野駅やJR上野駅の構内常設壁画を手がけ、2025年にベストデビュタントオブザイヤーに選出。冬季五輪日本代表や、SUPER FORMULA ドライバーのヘルメットデザインなども手掛ける。
Instagram:https://www.instagram.com/tarobee1212/
KOMOREBI
MCのSAM、MAXI、YUTA、MATHEUS、そしてDJ OTAによる、4MC & 1DJのオルタナティブヒップホップユニット。2023年に本格始動。独自のルーツから稀有な個性を持つ5人が木漏れ日のように交わり、自分たちのオリジナルカルチャーを音楽で表現。ヒップホップ・ロック・R&B・ポップス、ジャンルの枠を超えてミックスしたボーダーレスなサウンドと、夢・希望・弱さ・不安など等身大の感情をリアルに描いた歌詞で、同世代を中心に憧れと共感の両面で支持を集めている。
【展覧会情報】
尾形凌×真田将太朗「CUE」
会期: 2026年4月15日(水)~5月9日(土)※日曜定休
時間:18:00-24:00
会場:WALL_alternative(東京都港区西麻布4-2-4 1F)
入場:無料・予約不要
企画・主催:WALL_alternative
グラフィックデザイン:赫赫
【TALK SESSION】
日程:2026年5月2日(土)
時間:18:00-19:00
※19時以降は通常営業
※事前申込・抽選制/入場無料
登壇者:尾形凌/真田将太朗/古後友梨(MEET YOUR ART共同代表)
会場:WALL_alternative(東京都港区西麻布4-2-4 1F)
お申し込みURL:https://forms.gle/br7ABgrctDnhUme27
※MEET YOUR ART公開収録での撮影となります。
※抽選結果は4月24日(金)に当選者のみにお知らせいたします。
なお、結果に関するお問い合わせはご遠慮下さい。
【アーティスト在廊日程(予定)】
4月16日(木)~18日(土) 尾形凌
4月22日(水) 尾形凌
4月25日(土) 尾形凌
4月30日(木) 尾形凌
5月2日(土) 尾形凌・真田将太朗
5月9日(土) 尾形凌
※在廊日程は予告なしに変更する場合がございます。予めご了承ください。








